訪問診療の始め方ガイド〜申込みから利用開始までの流れを解説〜

「親の通院が難しくなってきたので訪問診療を検討しているけど、どうやって申し込めばいいのかしら…」

在宅医療の必要性を感じながらも、具体的な手続きがわからず戸惑う方は少なくありません。

実は、訪問診療の利用開始には、利用条件の確認から、必要書類の準備、医師との面談、契約締結まで、いくつかのステップが必要です。

この記事では、訪問診療を利用するための条件や申込みの具体的な手順、初回訪問までの流れを詳しく解説します。

これから訪問診療の利用を考えている方は、ぜひ参考にしてください。

安心して訪問診療を始めるために必要な知識を、この記事で身につけましょう。

2025年03月11日更新
一般社団法人 誠創会 代表理事/あさがおクリニック渋谷院 院長

東京大学医学部を卒業後、日本赤十字社医療センター救急科に勤務。救急医として術後管理や外傷治療など、幅広い診療経験を積む。救急科専門医取得を経て、東京都渋谷区笹塚にクリニックを開設し、在宅医療を軸とした地域医療に携わる。一般社団法人誠創会代表理事として、「理想の地域医療を創る」というビジョンのもと、地域に根ざした医療の実現に尽力している。

訪問診療の利用条件を理解する

訪問診療は、通院が困難な方に対して医師が定期的に自宅を訪問し、医療を提供するサービスです。

医療法において、「通院が困難」と判断される基準は医学的理由と社会的理由の両面から評価されます。

医学的理由としては、寝たきり状態や重度の認知症、終末期の状態、重度の障がいなどが該当します。

また、退院直後で通院が困難な場合や、在宅での継続的な医療処置が必要な場合も対象となります。

社会的理由としては、高齢による移動困難や、独居で介助者が不在の場合、交通手段が確保できないなどの状況が考慮されます。

具体的な対象者の条件や事例については下記記事をご覧ください。

訪問診療を受けられるのは誰?〜対象者の条件と具体例を詳しく解説〜

訪問診療の申込み手順

「訪問診療を受けたいけど、どこから始めればいいの?」 このような声をよく耳にします。

ここでは、具体的な申込方法について解説していきます。

訪問診療開始までの流れ 

訪問診療開始までの大まかな流れは下記となります。

  1. 事前準備
  2. かかりつけ医またはケアマネージャーへの相談
  3. 初回面談の予約
  4. 初回面談
  5. 契約締結
  6. 訪問診療の開始

それではそれぞれについて解説していきます。

事前準備

事前に必要書類及び、医療情報の整理をしておきましょう。

分からない際はケアマネージャーや訪問診療クリニックの方が教えてくれますでので、気軽に相談するのがよいでしょう。

必要書類の準備

準備が必要な主な書類:

  • 健康保険証
  • 介護保険証(お持ちの方)
  • 診療情報提供書(訪問診療クリニックやケアマネージャー側でかかりつけ医から取得してもらえる場合もございます。)
  • 現在服用中のお薬の情報
  • 直近の検査結果(お持ちの方)

医療情報の整理

整理しておきたい情報:

  • 現在の症状と経過
  • 既往歴(過去の病気)
  • アレルギー歴
  • 服用中の薬
  • かかりつけ医療機関の情報

かかりつけ医またはケアマネージャーへの相談

訪問診療の利用を検討する際、最初の相談窓口として、かかりつけ医やケアマネージャーが重要な役割を果たします。

ケアマネージャーは地域の医療・介護サービスに精通しており、適切な訪問診療医の紹介や介護保険サービスとの調整、具体的な利用手続きの支援をしてくれます。

初めての方で、かかりつけ医やケアマネージャーがいない場合は、地域包括支援センターに相談することをお勧めします。経験豊富な職員が、あなたの状況に合わせて具体的なアドバイスをしてくれます。また、訪問診療を実施している医療機関の情報も提供してもらえます。

牧 賢郎 医師

初回面談の予約

かかりつけ医、ケアマネージャー、地域包括支援センターに相談すると訪問診療クリニックを紹介してくれますので、初回の予約をします。

ご自身で調べて、訪問診療クリニックに直接連絡し、予約することも可能です。

初回面談

医師による確認事項

医師による初回面談では、患者さんの状態と生活環境を総合的に評価します。

確認項目

内容

目的

医療ニーズ

現在の症状と病歴
治療内容
服薬状況
医療処置の必要性
医療機器の使用状況

適切な医療計画の立案

生活環境

療養スペース
医療機器設置場所
衛生状態
安全性

自宅療養環境の整備

介護体制

主介護者の状況
家族の協力体制
介護サービスの利用
緊急時の連絡体制
要望や不安点

支援体制の構築

面談のポイント
事前に家族で話し合い、医療や介護に関する要望や不安点を整理しておくことをお勧めします。

牧 賢郎 医師

診療計画の作成

医師は初回面談の情報をもとに、以下の要素を含む具体的な診療計画を作成します。

計画項目

内容

訪問スケジュール

訪問頻度と時間帯の設定

検査計画

血液検査等の実施時期

医療処置

処置内容とリハビリ計画

連携体制

訪問看護や介護サービスとの調整

緊急対応

急変時の連絡方法と対応手順

契約の締結

訪問診療の利用を開始する際には、医療機関との契約が必要となります。

この契約は、患者・家族と医療機関の間で交わされる重要な取り決めで、提供される医療サービスの内容や条件を明確にするものです。

下記の内容は一般的な契約書の項目となり、医療機関によって契約内容は異なります。

項目

詳細

基本内容

診療内容、頻度、時間帯

費用

自己負担額、追加料金

緊急対応

24時間体制、連絡方法

個人情報

情報共有の範囲、管理方法

利用契約は医療サービスを受ける上での基本となる取り決めです。
契約内容をよく確認し、特に緊急時の対応体制については詳しく確認することをお勧めします。
不明な点がある場合は、必ず医療機関に質問し、理解を深めてから契約を結びましょう。
自身の状況に最も適した医療機関を選ぶためにも、複数の医療機関の契約内容を比較検討することをお勧めします。

牧 賢郎 医師

訪問診療の開始

契約が完了しましたら、実際に訪問診療が開始となります。

訪問診療を円滑に続けていくためのポイント:

  • 体調の変化は小さなことでも報告する
  • 医療者からの指示は家族で共有する
  • 困ったことは早めに相談する
  • サービス担当者会議には積極的に参加する

特に、医療と介護の連携を上手く活用することで、より充実した在宅療養生活を送ることができます。
分からないことがあれば、担当の医師や看護師、ケアマネージャーに気軽に相談してください。

牧 賢郎 医師

訪問診療クリニックを変えたい場合

訪問診療クリニックの変更は、より適切な医療サービスを受けるために検討される選択肢の一つです。

変更が検討される主な理由は下記のようなものがあります。

  • 診療内容への不満
  • 対応への不安
  • 他院からの紹介
  • 引っ越し
  • 医療ニーズの変化

具体的な変更手続きや注意事項については、下記記事をご覧ください。

【Q&A】訪問診療クリニックを変更できる?クリニック変更時のポイントを解説